鳥インフルエンザがもたらす人への脅威(インフルエンザは人獣共通感染症の一つ)

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【2019年10月16日に追記いたしました。】

インフルエンザと言えば、私たちが一番耳にする機会の多い感染症だと思います。実は、インフルエンザ(A型)は人だけでなく鳥、豚をはじめとする動物にも感染します。

また、それ以外にも猫、馬、犬、トラ、ミンク、アザラシ、マウス、うさぎ、ヒョウにも感染事例があります。鳥インフルエンザは、2002年から50種以上の野生鳥、水生鳥類から検出されたと報告があります。

インフルエンザの懸念点として、新しい種を超えた(人への感染)感染が起こる可能性があります。

現に、豚インフルエンザや鳥インフルエンザは人に感染しています。但し、そこから人から人への2次感染は今の所起こっていません。

補足:インフルエンザA型は全て水上や水辺で生活する鳥由来であることが分かっています。

そこで、人獣共通感染症であるインフルエンザがもたらす脅威についてご紹介いたします。

鳥インフルエンザは人に感染する

1997年以前には、鳥インフルエンザが人に感染することが報告されるまで種の壁を簡単には超えないと思われていました。

それは、感染するためには、ウイルスの表面タンパク質のHAと宿主の細胞膜にあるレセプター(受容体)が結合する必要があります。

インフルエンザウイルスのようなRNAウイルスは、複製する時に、「完全コピー」しない時があります。つまり失敗のまま複製してしまいます。その結果、新しい遺伝子ができ、「HA」、「NA」のタンパク質の構成や少しだけアミノ酸の配列が違うタンパク質が生まれて、突然変異のウイルスが生まれます。

これらは、鍵と鍵穴(HAとレセプター)の関係に酷似しております。インフルエンザウイルスのHAはシアル酸を末端にもつ糖タンパク質や糖脂質をリセプターとしています。

しかし、鳥インフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスでは鍵穴に当たるレセプターのシアル酸の結合が異なります。

そのため、ヒトインフルエンザウイルスが感染する人の鼻粘膜、副鼻腔、咽頭、気管の上皮細胞には鳥インフルエンザウイルスのリセプターがないのです。

一方、研究を進めると人の肺の中にある細気管支と肺胞に鳥インフルエンザのリセプターがあることが判明しました。

実際に、世界中で鳥インフルエンザに罹患した人が報告されています。

厚生労働省健康局結核感染症課鳥インフルエンザ

弱毒性と強毒性の鳥インフルエンザについて

インフルエンザの型によってウイルスの病原性に違いがでます。しかし、ウイルスを構成する物質自体には毒性はありません

型が違っても化学的な組成はほとんど変わりません。その原因となるのは、ウイルスが増殖できる宿主の臓器の種類と増殖速度が異なるからです。

弱毒性の鳥インフルエンザは鶏の呼吸器や腸管でした増えません。しかし、強毒性鳥インフルエンザウイルスは脳や臓器、全ての鶏の細胞で増殖することができます。

弱毒性を「局所感染」、強毒型を「全身感染」と呼びます。

従って、ウイルスが増殖できる場所が多ければ多いほど宿主に対してダメージを与えてしまいます。

強毒性の鳥インフルエンザに感染した鶏は、出血を伴う組織破壊を起こし、感染して1日以内に死に至ることもあります。実験ベースでも死亡率100%です。

通常、鶏舎の中で1匹が発症するとすぐさま鶏舎全体に広がり全滅することが多いです。

国際獣疫事務局(OIE)によると、強毒性鳥インフルエンザはいずれかを満たした場合に病原性が高いと定義します。

①6週齢鶏の静脈内接種試験で病原性指標(IVPI)が1.2以上又は4~8週齢鶏の静脈内接種試験で75%以上の致死率を示す場合

②H5又はH7亜型のウイルスで、特定部位のアミノ酸配列が既知のHPAIウイルスと類似している場合

一方、弱毒性の鳥インフルエンザは、呼吸器や消化器の「局所感染」しかしないため、死ぬことは少ないです。

鳥インフルエンザは弱毒性・強毒性どちらにも変異する可能性

弱毒性の鳥インフルエンザが強毒性の鳥インフルエンザに変異するには以下の2通りです。

・タンパク質分解酵素を邪魔する糖鎖がなくなることでウイルスがそもそももっていた強毒性の性質が現れるケース

・何度も写って増殖する過程で変異を繰り返して強毒性の性質が現れるケース

そもそも、遺伝的にはほとんど同じウイルスが少しのアミノ酸の変異だけで、病原性にも大きく違いがでます。

その強毒性を持った鳥インフルエンザウイルスがヒトインフルエンザとなりパンデミックを起こす可能性は十分にありえるのです。

下記にWHOが発表しているインフルエンザパンデミックのフェーズをまとめた表を参考にしてください。

鳥インフルエンザWHO

スペイン風邪、アジア風邪、香港風邪によるインフルエンザパンデミックは、どれも鳥インフルエンザからの変異で大流行したことが分かっています。

補足:スペイン風邪は、1918年〜1919年の2年の間に2000万人〜5000万人の死亡者がでました。第一次世界大戦中だったこともあり被害がより拡大したとも言われています。スペインだけでなく、アメリカ、イギリス、フランスなどにも拡散し、日本でも38万人が亡くなったとされています。スペイン風邪は、言わずもがなペストを超える歴代最悪の感染症でした。

鳥インフルエンザでは鳥の種類によっても感染度合いが異なる

2008年、ジョージア大学の獣医医学部の研究によると、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)に白鳥とガチョウを感染させると種間で異なることが分かりました。

その結果、最も高い死亡率は白鳥で観察され、臨床疾患とウイルス排出の種に関連した違いが明らかであることが分かりました。

参考:「Experimental infection of swans and geese with highly pathogenic avian influenza virus (H5N1) of Asian lineage」

塩素を含む飲み水内の鳥インフルエンザウイルスに有効

アメリカCDC(アメリカ疾病予防管理センター)で発表された研究についてご紹介します。

飲料水や貯水池を含む開放水域は、ウイルスを積極的に排出している鳥や水鳥の死骸によって汚染される可能性があります。

高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルスは、低病原性鳥インフルエンザウイルスよりも水の中に存続することができます。

そのため、飲料水は鳥インフルエンザの伝播に関係しているため、積極的に予防する取り組みが必要です。

そこで、2種類の高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルスを用いて異なるpH(pH7、pH8)の塩素処理したお水内でのウイルスの不活化実験を行いました。

補足:pH8よりもpH7の方がウイルス不活化スピードが早いです。

その結果は、鳥インフルエンザ(H5N1)が塩素処理により容易に不活性化されることを確認しました

遊離塩素残留(0.52〜1.08ppm)の維持は、1分間の暴露時間でウイルスを3桁以上不活性化するのに十分でした。

この研究で使用した条件と同様の条件での飲料水の消毒については、アメリカ合衆国環境保護庁(United States Environmental Protection Agency, EPA)は遊離塩素6〜8ppm/minで、それぞれ3桁および4桁の腸内ウイルス不活化を達成できるとされています。

参考:CDC「Chlorine Inactivation of Highly Pathogenic Avian Influenza Virus (H5N1)」

以上、鳥インフルエンザがもたらす人への脅威(インフルエンザは人獣共通感染症の一つ)についてご紹介しました。

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