【追記2018年5月21日】
先進国は下水道の整備、安全な浄水システムがあって水道水が飲めたり、ワクチンにより予防ができていますが、発展途上国ではまだ整っていないので、海外に行く時には注意が必要です。
私たちが今、恩恵を受けているのは先人の研究や経験をもとにあることを知るべきです。
そこで、感染症の原因が菌やウイルスと判明する前の時代の公衆衛生のお話から当時の対策、予防についてご紹介します。
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統計を使って感染症を予防した男
感染症の1854年にロンドンで大規模なコレラが流行し、大混乱に陥りました。コレラに感染すると激しい下痢になり、脱水症状になり当時、多くの命が亡くなりました。
ロンドンの裏路地には周辺の家で共有していたため池があり、そこに一時的に汚物を捨てていました。そのようなため池がたくさんあったので、ひどい悪臭が漂っていたそうです。
補足:その汚物処理をする仕事があり、工場勤務よりも2倍の給料がありました。
もちろん、ため池で増殖したコレラ菌が原因なんてわからないため、その原因を突き止めるために麻酔医であるジョン・スノー医師はコレラを発症した患者へ聞き取り調査を行い、その人の家や数の統計を取り地図に示しました。
そこで、飲み水として使用していた井戸の近くで感染患者が多いことが判明しました。
特に、蔓延が著しかった地域の井戸の水を飲むことをやめるように伝えましたがすぐには信じられませんでした。
しかし、藁にもすがる思いでやめた結果数日で、感染者の数が激減したことで、流行を抑制することができました。
実は、その井戸水のすぐそばにため池がありコレラに感染した人の便が井戸と地下で繋がっており井戸水として飲まれ、また感染者を増やすという悪循環になっていました。
しかし、ジョン・スノー医師の功績は認められずに生涯閉じてしまいました。
その数十年後、細菌学者によって便の中なからコレラ菌が発見され病原体の存在が知られるようになりました。
原因が分からなくても感染経路を特定することが統計を用いてできることが証明され、ここから免疫学という学問がスタートを切りました。
手洗いが感染症予防に効果的であると証明した男
オーストリアのウィーン大学付属の総合病院で子供を産んだ後死ぬ女性が最大で30%いたそうでした。その原因は産褥熱(さんじょくねつ)と言い、お産する時に産道や子宮腔内に傷ができそこから細菌に感染して引き起こされる発熱のことです。
ハンガリー生まれの産婦人科の医者、ゼンメルワイス医師はその産褥熱からなんとかして減らすために原因を調査しました。
当時、第一産婦人科と第二産婦人科で亡くなる女性の割合に2.5倍も差がありました。それが噂になり第二産婦人科に移動してもらうように懇願する人も増えたそうです。
今思うと非常にハイリスクなので、当たり前のお願いですよね。実は、家でお産した場合に産褥熱で亡くなる人はそこまで多くありませんでした。そこで、第一、第二の産婦人科の比較、女性患者の特徴、建物の違い、医者の能力、宗教の違いなど細かく分析を行っても謎に包まれたままでした。
違いについて有意差となるものはなく困っていたところ、友人の医者が解剖実験をしている時に誤って手を切ってしまい数日後亡くなってしまった事例が産褥熱の症状とそっくりだったため、死体についている何かが原因ではないかと突き止めました。
第一と第二産婦人科を比較すると第一産婦人科で死体解剖をした際に手を洗わない医者が診察した女性の死者が高いことがわかりました。
第二産婦人科では解剖を行なっていなかったためこのような差が出ました。その対策として、塩素を含んだ水で手を洗ってからおこないすぐに1%以下に減少しました。
ゼンメルワイス医師もジョン・スノー医師同様に受け入れられませんでした。
受け入れてしまうと、今まで死亡した女性の責任が医者であること、細菌という概念がまだなく原因は不明なこと、大学教授のメンツが潰れてしまうなど時代によることが原因でした。
しかし、違う国の大学病院宛に手洗いで予防できることを手紙で送って認知を広げようと努力しました。
ゼンメルワイス医師がなくなった後に手紙を読んで実践し、効果を認知した医師達によって手洗いの予防が受け入れるようになりました。
手洗いは様々な感染症対策として取れる簡単且つ、効果的な手段であり、今もそれは変わっていません。
石鹸の普及で感染症減少
水酸化ナトリウムが製法として確立し、脂肪酸に水酸化ナトリウムを反応させて固形石鹸にすることで大量に生産されました。
日本でも同様に、石鹸を使うことで手指から間接的に感染する患者が減りました。
また、衣類や掃除にも石鹸を用いることで、結核や天然痘ウイルスなどが洗い流されることで感染を軽減することができました。
今でも手洗いは、感染症予防のために効果的とされていていますよね。
ただし、石鹸で頻度多く洗いすぎると手指の油脂までとってしまいますので、保湿ケアなどで対策をしましょう。
細菌が原因で感染症になることを証明
ドイツ人のローベルト・コッホは、細菌が感染症の原因になることを初めて証明した細菌学者です。細菌がある特定したい病気の原因であることを証明するためには3つの条件をクリアする必要があります。
感染者から細菌が検出されること、その細菌が分離培養できること、培養した最近を動物に摂取して同じ感染症が現れることこれらを証明しなくてはいけません。(コッホの原則)
生物兵器と言われる炭疽菌やコレラ菌が感染症の原因となることを証明したのもローベルト・コッホです。
日本での昔からの感染症の予防方法
日本もロンドンと同じように1886年にコレラ菌が流行しました。
コレラは世界的に蔓延していてパンデミックが起きており、日本私立衛生協会(のちの日本医師会)によりコレラ予防法心得書を流布しました。当時の対策の方法を以下のことでした。
・腹を下しやすい食事を避けること
・飲酒はほどほどに
・衣類を清潔にする
・入浴をして体を綺麗にすること
・室内の清掃、便所掃除を徹底すること
・宵越しのゴミや生ごみを周りに捨てないこと
・下水・糞便は4〜5日で拾って人や家から遠いところに捨てること
・人がたくさん集まる場所に無用に行かないこと
・親戚家族でもコレラ発症した家にはいかないこと
・安静にし、医者の指示に従うこと
・規則正しい食事をすること
たくさん指示がありますが、今の予防方法と比較しても時に的を得た予防方法が当時からあることが分かります。
また、時代が進み1918年に内務省が出した流行性感冒予防心得では、コレラよりも詳しく予防法を示しました。
・病人や病人の疑いのある人咳をする人に近づかないこと
・たくさんの集まる場所にいかないこと(急用でなければ電車もさけて歩いたり、映画や芝居なども避けるべしとあります。)
・人の集まっている場所ではマスクまたは、鼻、口を手ぬぐいなどで軽く覆うこと
・塩水やお湯でうがいをすること
などポスターを貼って人々に認知を広げようとしていました。実際にどのような細菌なのかウイルスなのか分からない時に一般的な予防知識があることで防ぐことができます。
まとめ
19世紀頃から原因不明の伝染病の解明が進み先人のおかげで今の私たちが生きています。
もちろん、私たちだって先人同様新型のウイルスや細菌、もしくはまだ知らないだけで死亡の原因となっている「なにか」に直面する、しているのかもしれません。
感染症を防ぐためには、様々な予防法を組み合わせて行うことで感染するリスクを下げると同時に、原因についての知識を身につけることによって行動が変わってきます。
●人が多いところはいかない
●手洗いを石鹸を使い徹底する(のちに保湿ケアをする)
●次亜塩素酸水溶液などの除菌剤を活用する
●ワクチンを接種するなど
是非、感染する前に予防を徹底しましょう!以上、菌やウイルスがはっきり分かってなかった時代の感染症の予防方法についてご紹介しました。