テレビのコマーシャルで名前をきくこともあるラクトフェリン(別称:ラクトトランスフェリン)は、糖タンパク質の1種類です。
名前の由来はラテン語で「乳」をあらわすラクトと、同じく「鉄」をあらわすフェリンを組み合わせたものです。
乳糖がラクトースであることや鉄の原子記号がFeであることを知っている人は、すんなり覚えられるかもしれません。
そのラクトフェリンについて様々な生理効果が報告されています。それらについてご紹介したいと思います。
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ラクトフェリンの効果効能について
ラクトフェリンは世界中で研究対象となっており、主に、生体を守る作用と健康増進・維持作用する物質として注目されています。
日本ラクトフェリン学会により研究結果がでている一覧の表を引用します。
引用:日本ラクトフェリン学会
近年、腸内フローラが話題になっていますが、ラクトフェリンを摂取するとブドウ球菌などの悪玉菌を減少させる、という報告があります。
腸内フローラに関して記載している記事はこちらからどうぞ!
参考:キエルキンと赤ちゃんの関係「新生児の免疫力と母乳そして感染症について」
腸内環境が整うとお通じが快調になるだけでなく、肌質の改善や免疫力の向上がおこります。
ラクトフェリンが豊富に含まれているのは、人間の母乳です。初乳には100mlに対して600mgのラクトフェリンが含まれており、そこから徐々に濃度は低下して3週間で約70%減少すると言われています。
食品の中では牛乳の中にも含まれておりそこから抽出したものからサプリメントも作られています。
ラクトフェリンは感染症の予防になる?
ラクトフェリンが細菌に対する抗菌作用のメカニズムとして生育に必要な鉄を奪い取る働きによるものです。
ウイルスに対してのメカニズムは細菌とは異なります。ウイルス自体に結合することで標的の細胞への侵入を防ぐ作用やウイルスが増殖する過程の一つの複製を阻害することで抑制することができます。
ノロウイルスに対するラクトフェリンの予防効果は?
学校や職場で集団感染を起こして問題となるノロウイルスに対しても効果があるという研究がされています。
ノロウイルスは小腸の粘膜で増殖するウイルスで、冬に流行することが多いです。患者は嘔吐や下痢をしますが、その便や吐しゃ物にノロウイルスが含まれるため、感染が拡大します。
2018年12月に、森永乳業株式会社とアメリカミシガン大学との共同研究の成果が発表されました。
実験の内容は、ヒトの下痢便由来のヒトノロウイルスをヒト細胞に感染させる際に、ラクトフェリンを添加して培養しました。
培養終了後、培養液に含まれるウイルス RNAを抽出し、定量RT-PCR法でウイルスRNA量を測定しました。
また、ヒト細胞内でウイルスが複製する際に生じる2本鎖RNAに蛍光標識抗体を結合させ、フローサイトメトリー法で検出しました。
その結果、培養液に含まれるウイルスRNA量が3分の1程度減少しました。つまり、ラクトフェリンが、ヒトノロウイルスのヒト細胞への感染を抑制することが観察されました。また、人でも同様のメカニズムにより冬季の感染性胃腸炎の発症を抑制している可能性が示唆されました。
引用:ラクトフェリンがヒトノロウイルスのヒト細胞への感染を抑制することを観察
ラクトフェリンがノロウイルスの増殖を抑制するメカニズム
ラクトフェリンを摂取することで、ラクトフェリン、または胃での消化物がノロウイルスやロタウイルス等のウイルスの表面やその感染場所である消化器官の細胞と結合し、ウイルスが細胞内に侵入するのを抑制する効果があります。
また、ラクトフェリンが、病原体となるウイルスなどに反応して働く免疫物質を作り出すことで、細胞内に侵入してしまったノロウイルスが増えるのを抑制します。
ことにより、ノロウイルス等のウイルス感染性胃腸炎の抑制や下痢の期間の短縮化につながることが分かりました。
参考:ラクトフェリンのノロウイルス等のウイルス感染性胃腸炎への効果に関する報告
以上、ラクトフェリンはノロウイルスの予防に効果的?その他の効果についてご紹介いたしました。