昔は徒歩や馬で移動していたので、感染症が広がるまでに時間が何十年、何百年とかかっていました。
今は、当たり前のように飛行機に乗り、ボーダレスなグローバル化の中で私たちは生活をしています。
当たり前ですが、感染症は人によって運ばれます。
2000年を超えて初めて新型ウイルスによって感染症が世界を股にかけてどんどん拡散していきました。
新しいウイルスの出現としてニュースを賑わしたSARSとMARSですが、実はこれらは私たちが言ういわゆる風邪のウイルスの一つだったのですが、進化した結果、感染力の強さと強毒性を持ち合わせてしまいました。
そこで、今回はSARSとMARSについての概要を知り、これから遠くない未来に進化して出現する新型ウイルスについての対策や予防についてご紹介したいと思います。
Contents
SARSとは?
SARSは2002年11月~2003年6月までの間に、東アジアを中心に32ヶ国から8098人の発症者を出し、内774人が死亡しました。致死率は約10%弱でした。
幸いにも日本からは感染者がいなかったです。
SARS(Severe acute respiratory syndrome)は重症急性呼吸器症候群と呼ばれ、SARSコロナウイルス によって引き起こされるウイルス性の呼吸器症候群です。
SARSコロナウイルスに対する治療薬やワクチンを開発にはまだ至っておりません。
従って、症状を緩和させる対症療法のみしかできません。
コロナウイルスと言えば、風邪の原因となるウイルスで飛沫感染し、喉の粘膜から侵入して鼻やのどの炎症程度で収まる軽い症状が通常ですが肺炎を起こすことはありませんでした。
SARSの感染経路は?
SARSコロナウイルスは通常のコロナウイルスとは異なり、感染者の気道分泌物に含まれるウイルスからの飛沫感染または、飛沫が手に付着して、接触感染も起こります。
また、便からも長い期間ウイルスが排出されます。潜伏期間中にはほとんど排出せず、発症しても3、4日までは排出量は多くありませんが5日くらいになると大量に排出されるのでより注意が必要です。
感染するとウイルスが血流に侵入して全身に移動して、腸管感染や重症肺炎を引き起こします。
SARSの症状は?
SARSは2~20日と長い間潜伏期間がありますが、患者の平均をとると5日前後で発症に至ります。
インフルエンザのような急な38度を超える発熱、咳、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ます。全身の筋肉痛や下痢などの症状もでる場合があります。
SARSコロナウイルスはどこからやってきたのか?
私たちが知らないだけで野生の動物だけがもつ病原体はたくさんあるのかもしれません。
エボラウイルス同様にSARSコロナウイルス由来は中国南部に生息するコウモリではないかと言われています。
中国南部では、家畜や野生動物を食べる文化がありました。また、その地域の人の血清調査では20%程度の人がSARSコロナウイルスに対する抗体を持っていました。
このコウモリのウイルスが遺伝子の突然変異によって人から人に効率よく感染できるように進化したと考えられています。
以前にもこのような変化が地域で起きた可能性がありますが、当時はその集落のみで収まっていて拡大しなかった可能性があります。
SARSが終息してから約9年後の2012年には中東地域で重症肺炎を起こすMARSウイルスが出現しました。MARSも同様にコロナウイルスからなのです。
MARSとは?
SARSコロナウイルスと近い形の新型のコロナウイルスで、中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory syndrome)と命名されました。2012年9月にサウジアラビアからその周辺国に広がり、中東、ヨーロッパ、アメリカ、韓国など70カ国に拡散しました。
WHOによると、ウイルス検査によって確定した人数は2090人、死亡者は730人と報告されています。(2017年10月現在)
参考 http://www.who.int/emergencies/mers-cov/en/
特に韓国での流行とあって日本では、連日ニュースで取り上げられました。流行の2ヶ月の間に約200人の人が感染し、うち38名が亡くなりました。
韓国での感染の要因として文化的背景によって拡大したと結論づけられました。
・入院中に多くの人がお見舞いに来たり、お世話をすること
・優先的に医者に診てもらおうと患者と付き添い家族で病院に行くこと
・複数の病院を行き来すること
・かぜなどの軽い症状でも入院することができ一般病棟があくまでは救急病棟の大部屋に入院することなど
その後、政府が情報を公開し、感染症の封じ込めができ、流行を終息することができました。
MARSの感染経路は?
ラクダはMARSコロナウイルスをもつ中間宿主であることが分かっています。
ラクダの唾液や分泌物、排泄物にもウイルスが排出しているので、接触感染、飛沫感染、経口感染の可能性が高いです。
中東地域で、未殺菌のミルクや生肉などを取らないように注意することとラクダなどの動物に接触をさけるほうがいいです。
厚生労働省がMARSに関する主な質問について回答しています。
・現地では、こまめに手を洗う、加熱が不十分な食品(未殺菌の乳や生肉など)や不衛生な状況で調理された料理を避け、果物、野菜は食べる前によく洗う、といった一般的な衛生対策を心がけてください
・咳やくしゃみの症状がある人や、動物(ヒトコブラクダを含む)との接触は可能な限り避けてください
・咳、発熱などの症状がある場合は、他者との接触を最小限にするとともに、咳エチケット([1]マスクをする、[2]咳・くしゃみの際はティッシュペーパーなどで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむける、[3]使用したティッシュペーパーはごみ箱に捨て、手を洗うなど)を実行しましょう。
日常生活に支障が出る程の症状がある場合は、医療機関を受診してください。
参考 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mers_qa.html
MARSコロナウイルスはどこからやってきたか?
コロナウイルスは犬、猫、豚、牛、人を宿主とするウイルスでいわゆる風邪5%ほどの原因になる身近なウイルスです。
しかし、宿主でウイルスの遺伝子変化が起きて、人から人に簡単に感染するようになってしまいました。
MARSコロナウイルスはヒトコブラクダやコウモリからも検出されており、SARSコロナウイルスと同様にコウモリが起源の可能性が高いとされています。
コウモリから直接人間にではなく、ラクダの中間宿主を通して伝播しているのではないかと考えられています。
MARSコロナウイルスは直径100nmの楕円形のウイルスでエンベロープという脂質をまとったウイルスなので、アルコール消毒も有効であるし、次亜塩素酸水溶液も効果があります。中東地域では、宗教上の関係でアルコール成分を禁止しているのでより次亜塩素酸水溶液の必要性が高まっています。
MARSの症状は?
潜伏期間は2日〜12日程度あり、MARSにかかると発熱、せき、くしゃみ、息切れなどの風邪のような症状が現れ下痢をする人もいます。
また、重症化すると肺炎をおこします。重症化を起こしやすい人として糖尿病や免疫不全などの基礎疾患がある人や高齢の人でした。
呼吸器症候群が見られるだけでなく、急性の腎不全を伴う場合もあります。
腎不全やその他の臓器不全はサイトカインストームというウイルス感染すると過剰に免疫反応を起こしてしまい自分自身の細胞を攻撃してしまう現象により起こります。
ウイルスが血液に入り込み全身に影響をでるため、血液の透析を必要とする場合があります。その他には、血液凝固障害、心膜炎などを発症する事例もありました。
現在ワクチンはなく、治療薬もないため対症療法で対処します。
まとめ
私たちが暮らす21世紀は新型のインフルエンザや進化したウイルス・菌と人類は戦っていかなければいけません。
SARS、MARSどちらもコロナウイルスという風邪の原因になる今まで注目されていなかったウイルスですが、遺伝子が少し変化するだけで強毒性(致死性)を持ってしまいました。
感染する前の予防が非常に大切になってきます。
ワクチンも治療薬もないので、流行している場所を避けること、次亜塩素酸水溶液の除菌剤などを活用して環境中でやっつけること、石鹸などで手洗いをこまめにすることなど必要な予防策はすべてやるべきです。
以上、新型ウイルスの感染症SARSとMARS!今後の予防や対策についてご紹介しました!