人に感染をもたらすウイルスを2つに分類!アルコールが効かないノンエンベロープウイルスについて

ノンエンベロープウイルス

コロナウイルスが蔓延し、世界中の人にウイルスの悪名が知れ渡りました。ご存じの方はいらっしゃるかもしれませんが、生き物は細胞を持っていなければならないと決められたため、生物学上ウイルスは生物ではなく単なる物質(物体)とされています。

世界で初めて発見されたウイルスは1898年で、動物では口蹄疫ウイルス、植物ではタバコモザイクウイルスが見つけられました。しかし、ウイルスが小さすぎたため光学顕微鏡ではとらえることができませんでした。

ウイルス(タバコモザイクウイルス)を初めて見ることができたのは1935年で、電子顕微鏡によって観察されました。

そこで、今回はウイルスをさらに深堀し、特に関心があるであろう人に対して感染するウイルスを大きく2つ分類してご紹介します。さらに、みんながウイルス対策として使用しているあのアルコール除菌剤の効果がないウイルスについても触れていきたいと思います。

ウイルスはノンエンベロープウイルスとエンベロープウイルスの2つに分ける

ノンエンベロープウイルス

ウイルスを大きく分けると二種類の構造があります。核酸とカプシドのみ持つウイルスを「ノンエンベロープウイルス」と呼び、カプシドの周りにさらにエンベロープという膜を持ったウイルスを「エンベロープウイルス」と呼びます。

エンベロープとは「envelope」で、手紙に入れる封筒のことを指し、そこからが由来です。このエンベロープは、ウイルスが作り出すタンパク質とウイルスが感染した宿主の細胞膜が混在して構成されています。

エンベロープウイルス、例えば、インフルエンザやコロナウイルスなどはこちらに該当します。一方、ノンエンベロープウイルスは、ノロウイルスロタウイルスアデノウイルスが挙げられます。

重要なポイントは、ノンエンベロープウイルスはアルコール除菌剤が効果がありません。それは、アルコール除菌剤がエンベロープ(脂質膜)に作用していることが関係しています。

詳しくは下記に述べていきます。

アルコール除菌剤はノンエンベロープウイルスに対して効果がない

ノンエンベロープウイルス

上記の図を見ると、ノンエンベロープウイルスは脂質膜がなく、硬いカプシドのタンパク質の殻で守られているためアルコール除菌剤は効果がほとんどありません。

一方、エンベロープは脂質膜なので界面活性剤に弱い特徴があることやタンパク質をアルコール変性(壊す)する特徴があるので、ノンエンベロープウイルスに比べると薬剤耐性が低いウイルスです。

界面活性剤に弱いということは手洗い石けんも効果があります。脂質膜が壊れた=ウイルスは感染力が失われ不活化状態です。

下記の記事で詳しくアルコール除菌剤について説明しているのでご参考までに!

ウイルスの構造について

ノンエンベロープウイルス

ウイルスはとてもシンプルな構造をしています。遺伝子情報を持った核酸とそれを包むカプシドというタンパク質できた殻で作られています。

核酸とは、DNA(デオキシリボ核酸)RNA(リボ核酸)があり、それらの遺伝子が親から子へ、細胞から細胞へと伝えていく設計図となっています。(DNAを持つウイルスをDNAウイルスと呼び、RNAを持つウイルスをRNAウイルスと呼びます。)

キエルキン
キエルキン

これらの設計図がなければウイルスの重要な構成要素のタンパク質を作ることができません。

私たち人間の体には10万種類を超える違った役割を持ったタンパク質が存在します。タンパク質には触媒の作用があり、自身のタンパク質に変化はないですが、体内で行われる化学反応を促進させる役割があります。(例えば、酵素と呼ばれるタンパク質です。)

他にも、体外からの病原体から守る役割がある抗体、肌のハリに関係があるコラーゲン、血液中で栄養素を運ぶ物質もタンパク質からできています。

一方ウイルスには、たくさんのタンパク質があるわけではなく何種類〜1000種類程度で、ウイルスが生存するために必要な最低限度のタンパク質しかもっていません。

ウイルスの増殖のプロセス

ウイルスは自分だけでは増殖することはできません。宿主の細胞の中で増殖する必要があります。つまり、ウイルスは一人で分裂したり増えたりできません。人に感染するウイルスは人の細胞内で増えたウイルスなのです。

その増殖プロセスについて詳しく見ていきましょう。

ウイルス増殖
引用:神奈川県衛生研究所

1 吸着

ウイルスが感染する細胞の表面にウイルスがくっつきます。エンベロープウイルスは表面にくっつくためのタンパク質を持っています。

ノンエンベロープウイルスは、カプシドの表面に宿主細胞膜表面のタンパク質と結合できる部分がありそこに吸着します。

2 侵入

細胞に吸着した後、その内部へウイルス、またはウイルスのDNA、RNAが入りこみ侵入します。ウイルスそのものが細胞内に取り込んだり(エンドサイトーシス)やエンベロープと細胞膜が合体し(同じ脂質二重膜)中にタンパク質と核酸が内部に侵入したりします。

補足:バクテリオファージはこのプロセスはありません。直接DNAを注入しているからです。 ちなみに、バクテリオファージとは細菌に感染し、細菌の細胞中で増殖するウィルスのことです。

3 脱穀

細胞の仕組みを利用でしか増殖できないため、タンパク質の殻を壊し、ウイルス自体の核酸を細胞質内に放つことを脱穀といいます。

エンベロープウイルスの場合細胞質に存在するリソソーム(タンパク質分解酵素)などを使いカプシドを分解し、中の核酸を細胞内に放っています。

4 合成(遺伝子発現、翻訳、蛋白合成)

ウイルスのDNAやRNAが持つ遺伝情報をもとにウイルスのタンパク質やDNA、RNA(核酸)を複製してたくさんの子ども(コピー)を作りだすことを合成と呼びます。

5 成長(ウイルス粒子形成)

合成にてパーツが作られたあと、組み立てられて、子どもになるために成長していきます。4、5のプロセスが繰り返されて増殖していきます。

6 放出

感染した細胞内でウイルスが増殖し細胞の外に飛び出すことを放出と呼びます。この時に細胞が死ぬ場合と殺さず放出される場合があります。細胞を殺していく時には、細胞膜が破れウイルスが一気に飛び出ます。

補足:バクテリオファージが放出する時には溶菌と呼びます。

他方、細胞を殺さない場合は出芽という方法をとって細胞外に放出します。(殺さないけど大量のウイルスに感染している細胞なのでのちに死ぬ可能性が高いです。)

エンベロープは細胞膜と同じ脂質二重膜でできていることで、ウイルスはカプシドを細胞膜で覆うようにして細胞の外へ出ていきます。

これらの6つのプロセスを経てウイルスは増殖して次世代に情報を残し生きているのです。そもそもウイルスはどこから来たのでしょうか?

ウイルスはどこから来た?

ウイルスは微生物に近いけど違う存在です。無から急に生まれて存在したことは難しいのですが、いったいどのようにしてウイルスが発生したのでしょうか?

現在では、ウイルスの起源は大きく分けて3つの仮説が立てられています。 

従来ウイルスは細胞だったという説

もともとウイルスは独立した細胞でしたが、何らかのきっかけで他の細胞の代謝メカニズムや複製を利用して、自らの子供を作る働きのみを残して、すべての機能や細胞小器官を失ってしまったのがウイルスという仮説です。

ウイルスの宿主細胞に感染する際に、細胞表面のタンパク質を介して吸着し、侵入するメカニズムをもっていることはもともと細胞だったのならば辻褄が合います。

しかし、他の細胞に依存する生き方は他の細胞がないと増殖することができないということなので、リスクも生ずる。なぜ失ってしまったか、もしくは失おうとしたかは分かっていません。

細胞内の自己複製分子がウイルスになったという説

 単細胞生物である細菌は自分が持っているDNAとは別に、独立して複製する環状DNAを持っています。

また、植物細胞の中にも自己複製するRNAがあります。このような自己複製分子細胞から細胞へ移動する場合もあり、そうしたものが細胞の中の遺伝子を取り込み、やがてウイルスへと「進化」したのではないかという仮説です。

ウイルスは細胞とは別に生まれた説

1、2と異なり細胞が前提として派生したのがウイルスという仮説でしたが、3つ目は、細胞とウイルスがそれぞれ別個に誕生したという仮説です。

細胞が誕生する以前の世界では、自己複製するRNAが複製を繰り返していたという説があります。その中で、RNAがタンパク質でできた殻(カプシド)に包まれたウイルスが誕生したのではないか。

しかし、この仮説は、細胞に依存して増殖するメカニズムを説明することが難しいのです。

これらを追求するためにはまだ発見されていないウイルスに対しても研究していく必要があります。それらの構造や性質を知り探求していくことで、いずれ解明することができるかもしれません。

ウイルスに過剰に敏感になる必要はない!

そもそものウイルスの起源は分かったけど、ウイルスって実際怖いものなの?という疑問が出てきます。

空気中、食品の中、お部屋などどこにでもいます。しかし、ウイルスの大半は病原性があるわけではないので、神経質になりすぎる必要はありません

ウイルスが一番多い場所はどこだと思いますか?それは、生物と同じで海の中と言われています。新しい種類のウイルスも海から発見されています。

科学誌「ネイチャー」によると、海水1ml当たり約1,000万もウイルスがいると発表されています。(ほとんどが細菌を食べるバクテリオファージと述べられています。)

また、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の研究者たちは、地球の大気境界層下を飛び回るウイルスの数を測定し、どれだけ多くのウイルスが上層大気から地表に落下しているか調べました。

その結果、毎日2.6億〜70億個/㎡のウイルスが地球の大気境界層より地表に降り注いでいることが判明しました。同じく、細菌に関しても300万〜8000万個/㎡は落ちてきているということです。

細菌に比べてウイルスは小さい分空気に乗って遠くに飛ばされ、堆積するスピードも9倍~461倍ほど早いそうです。

もちろん、全てのウイルスが人に対して病気をもたらすものではありませんし、体内に侵入してきても体内の免疫機構が常時守ってくれますのでご心配は無用です。

まとめ

上記のことをまとめます。

・人に感染するウイルスは大きく分けてエンベロープウイルスとノンエンベロープウイルス

ノンエンベロープウイルスはアルコール除菌剤に効果がない

・エンベロープウイルスは脂肪膜があるので手洗い石鹸も効果がある(アルコール除菌剤も効果ある)

・人に感染するウイルスは人の細胞で増殖する

以上、人に感染をもたらすウイルスを2つに分類!アルコールが効かないノンエンベロープウイルスについてご紹介しました。

また、記事内で紹介した次亜塩素酸を使用した除菌・消臭剤「キエルキン」はこちらのページでお求めいただけます。気になる方はぜひお試しください!