【2019年9月6日に追記しました。】【2019年12月13日に追記しました。】
インフルエンザにかかると体がだるいし、高熱がでて、大変ですよね。実は、悪化して重症化するとそれどころでは済みません。
インフルエンザから合併症を引き起こし、インフルエンザ脳症になる可能性があります。
厚生労働省が発表している2009年から2015年までの6年間で748の事例がありました。
特に、抵抗力の弱いこどもがかかることが多いので、適切に対応しなければいけません。
それでは、インフルエンザの時に解熱剤や治療薬、インフルエンザ脳症の体験談を通してインフエンザ脳症について認知して頂けたらと思います。
Contents
インフルエンザ脳症とは?
インフルエンザ脳症は他の症状との境界線が曖昧でありますが、以下のような定義に準じて診断をくだしています。
ア. 必須の項目
1 急性発症の、意識障害を主徴とする症候群急性脳症による意識障害は、ほとんどの場合、一定程度(傾眠ないしせん妄)以上の重症度と一定程度(12~24 時間)以上の持続時間を有する。
しかし、二相性の経過をとる症例がよくあり、この場合、発症後早期の意識障害は一過性でも、後に意識障害の悪化する場合がある。
2 インフルエンザのウイルス学的診断
日本の臨床現場では、迅速診断キットを用いたインフルエンザ抗原検査が最も広く使われるが、ウイルス分離やウイルスRNA遺伝子検査、ペア血清による抗インフル エンザ抗体価測定も含める。迅速診断キットには一定の頻度で偽陰性・偽陽性が起きることがあるため、確実ではない。特に、脳症の症例については、可能であれば複数病因の確定(例えば、迅速診断キットとウイルス分離)が実施できれば理想的である。
イ. 参考となる項目
1 発症:インフルエンザに続発する。一般に有熱期に発症する。
2 臨床症状:しばしばけいれんや頭蓋内圧亢進症候(嘔吐、意識障害、乳頭浮腫、脈拍・血圧・呼吸の変化、瞳孔・眼球運動の異常、肢位・運動の異常など)をともなう。
3 検査所見:しばしば血液学的、生化学的な異常所見(多くは非特異的)を伴う。髄液細胞 数は正常範囲内であることが多い。
4 頭部画像所見:頭部 CT・MRI でさまざまなパターンの浮腫性変化が描出されることが多 い。 5 予後:しばしば死亡や神経学的後障害をもたらす。
6 インフルエンザの診断には、周囲での流行状況など疫学的関連事項も参考になる。
ウ. 除外項目 意識障害をきたす他の疾患を除外する。
引用:「日本医療研究開発機構研究費 インフルエンザ脳症の診療戦略」
厚生労働省が2005年に初めてインフルエンザ脳症についてのガイドラインが示めし、その後、2009年に改定が行われました。
また、小児の医療現場で適切な診断ができるために、最新の科学的なエビデンスをもとに小児急性脳症診療ガイドラインを2016年に作られました。
インフルエンザ脳症の治療しなかった場合の致死率は約30%でしたが、ガイドラインが制定されてから8~ 9%と減少しました。他方、後遺症を残す子どもは未だに変化はなく約25%となっております。
インフルエンザ脳症の治療法の中にはまだ症例の経験が少なく、有効性が充分検証されていない方法もあり、今も研究が進められています。
インフルエンザ脳症を患った体験談の紹介
2016年11月に突然の意識障害を起こし救急車に運ばれたことがあります。
病院に運ばれてすぐに医師からインフルエンザ脳症であると告げられました。
インフルエンザ脳症の症状は、数十分間ガクガクとけいれんを起こしたり、急に暴れだして大声を上げたりする異常行動に加え、自分が体験した意識障害が主です。
医者から告げられてすぐは何も考えられずただ呆然としていたのですが、しばらくして落ち着くと後遺症と言う三文字が頭を過ぎり突然恐怖に襲われました。
インフルエンザ脳症は死亡率の高さが懸念されているほどあるのを知っていたのでより強い恐怖を感じました。
恐る恐る後遺症について医師に聞いたところ、下手をすると知的障害に似た症状を起こしたり、無意識の状態で暴れまわってしまうような症状が起きる重度のてんかん、集中力や思考力が落ちて言語障害になる高次脳機能障害などの後遺症を患う確率が非常に高いと言われました。
それを耳にしたときは驚きしばらくものが喉を通らなくなるほど落ち込んだのですが、軽度のインフルエンザ脳症で済み数ヶ月の入院期間を経て無事完治しました。
インフルエンザ脳症の支持療法について
治療法としては、主に支持療法と特異的治療の2通りありますが、それらの効果がない場合に特殊治療を行います。
支持療法と特異的治療を組み合わせてインフルエンザ脳症と戦っていくことになります。
ここでいう特異的治療とは以下の治療方法のことです。
・抗ウイルス薬(タミフル)の服用(脳症の誘引となる気道局所の感染の拡大を抑制)
・メチルプレドニンパルス療法として点滴摂取(中枢神経系内の高サイトカイン状態や高サイトカイン血症の抑制に有効)
・ガンマグロブリン大量療法を点滴として摂取(高サイトカイン血症に対し有効)
また、支持療法と特異的治療の後に以下の特殊治療を行います。
・脳低体温療法(神経障害の拡大を阻害する目的)
・血しょう交換(細胞障害、組織障害の進行を阻止する可能性)
・シクロスポリン療法(細胞障害、組織障害の進行を阻止する)
・アンチトロンビンⅢ大量療法(好中球の活性化による組織障害)
・脳保護剤(フリーラジカル消去剤:脳障害を軽減する)
参考: インフルエンザ脳症改訂版ガイドラインはこちらからどうぞ
インフルエンザ脳症の時に適切な解熱剤を使用する
インフルエンザ脳症にかかると、高熱や神経痛、関節痛といったインフルエンザの感染症でよくあらわれる症状だけでなく、意識障害や痙攣なども引き起こすようになります。
この疾病の治療の中では、抗インフルエンザ薬や免疫機能を正常に戻す薬など、さまざまな種類の薬が用いられ、ケースによっては高熱を抑えるために解熱剤が用いられることがあります。
ここで注意が必要なのは解熱剤で、患者に投与する解熱剤の種類を間違うと、生命に危険がおよぶおそれがあります。
インフルエンザ脳症の治療では、ジクロフェナクと呼ばれる成分が含まれている解熱剤が投与してはならない医薬品に指定されており、ジクロフェナクが含まれている医薬品の添付文書には必ず記載されています。
なぜかというと、ジクロフェナクを投与されたインフルエンザ脳症の患者の中に、予後不良となった例と、脳血管の損傷が認められる例が報告されているからです。
ジクロフェナクは解熱剤の中では強く作用する薬であるため、高熱が出ている人に対してよく処方されていますが、インフルエンザ脳症の患者に対しては、逆に病状を悪化させる場合があります。
なので、代わりにアセトアミノフェンを有効成分とする解熱剤が処方されます。
アセトアミノフェンは副作用も少なく子供から大人まで使用することができますが、用法用量を医者の指示のもと使用することをおすすめします。
インフルエンザの時には治療薬タミフルの使用と効果
「タミフル」は代表的なインフルエンザの治療薬です。インフルエンザウイルスに感染してから48時間以内に服用することで重症化を防ぐことができます。
国としては、パンデミック対策として大量のタミフルを保管していますが、服用すると異常行動を起こす、という騒ぎが発生したことがあり、躊躇される方もいらっしゃると思います。
この件に関しては、調査の結果、異常行動の原因はインフルエンザそのものであると結論づけられていますので心配はいりません。
タミフルはインフルエンザA型、B型どちらにも有効な上に、効果の高い治療薬であることは間違いありません。
タミフルは、症状が出始めてから48時間以内のなるべく早い時期に服用することで高い効果を発揮します。
残念ながら、症状が出てから48時間を過ぎてしまうと、効果が極端に弱くなってしまいますので、医師が48時間を超えたと判断した場合は処方されない場合もあります。
その場合は、食事や療養などの対症療法が必要になり自己免疫を高めて自然治癒させていきます。
日本は欧米と比較して、インフルエンザの治療薬が過剰に処方されていると批判されることがありますが、欧米と日本とでは保険制度も異なるので、一概に良い悪い判断できないと思います。
治療薬のタミフルを予防投与する対象者について
最近では、インフルエンザの発症者と同居している高齢な方や、病を患っている方の感染を予防するために使われることもあります。しかし、その効果は最大で10日前後と言われており長くは持続しません。
タミフルは基本的には治療として使用しますが、下記の対象者において、予防投与すること場合があります。
●インフルエンザに感染や発症すると重症化する人
●2次疾患を発症しやすい65歳以上の高齢者
●持病をもっている基礎疾患がある人
●受験など特殊な事情がありインフルエンザにかかると不利益を被る人
また、場合によっては、医療従事者や、上記の濃厚接触者が対象になります。
インフルエンザウイルスは形を変えやすく、タミフル耐性を持ったウイルスも検出されたと言われています。
なので、医療従事者の方はインフルエンザの流行になる1ヶ月前にはワクチンを接種してください。
また、インフルエンザに感染したもしくは疑惑がある人と濃厚接触した疑いがあるときは、他人への飛沫感染を防ぐために人がいる環境ではマスクを着用しましょう。
まとめ
日本において、インフルエンザが重症化してインフルエンザ脳症を患う事例が年間で約100件あり小さな子供に多いです。
インフルエンザの治療薬としては48時間以内にタミフルを服用すると効果がありますが、悪化してインフルエンザ脳症の疑いがあるときは専門的な病院に行き入院をする必要があります。
注意点として、インフルエンザ脳症の疑いがある時にジクロフェナクと呼ばれる成分が含まれている解熱剤が投与してはならない医薬品に指定されており、代わりにアセトアミノフェンを有効成分とする解熱剤を使用することになっております。
事故判断で逆に悪化させないようにしてください。
インフルエンザ脳症の後遺症はすぐに治療しないと確率はどんどん上がってしまうので違和感や症状を感じたらすぐに診てもらいましょう。
その時の治療方法として、支持療法、特異的治療を組み合わせて行います。体験談も載せていますが、本当に怖い病気です。
インフルエンザ脳症について少しでも分かって、行動が起こして亡くなる人や後遺症になる人をなくしたいです。
以上、インフルエンザ脳症の生の体験談をご紹介!治療薬、解熱剤などの薬の注意点でした。