日本で起きる食中毒で原因となるのはノロウイルスが半分以上ありますが、それ以外にも細菌が原因で起きる食中毒も起こっています。
今回は、病原細菌(バクテリア)による食中毒についてご紹介したいと思います。
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現代の食生活では食中毒が起きやすくなっている?
細菌がウイルスと違う一つの点として体内でのみ増殖するのではなく体外でも栄養分がある場所(食べ物は最高の培地)で増殖できることです。
基本的に少量であれば、食品中で病原性細菌やウイルスがいたとしても胃酸によって殺してしまいますが、大量にいれば一部胃をすり抜けて腸に到達し、腸炎や下痢を引き起こしてしまいます。
また、菌が食品中で増殖して毒素タンパクを分泌する場合には食べるとすぐに感染してしまいます。
給食やお弁当屋さんスーパーなど一度に大量に生産されて消費される社会です。
その流通が拡大し食品を作ってから食べるまでに時間が相対的にかかってしまいます。厚生労働省によると食中毒事件数は減少傾向にあり患者数の推移も下がっている一方で、1件あたりの被害者数は増えています。
食中毒の原因となるバクテリア(細菌)はどんな菌?
人間の腸内にはたくさんの細菌が存在し、私たちと共生しています。病原細菌が付着した手から口に入ってきたとしても、病原最近の数が少ない場合発症しません。通常食中毒が発症する細菌の数は100万〜1億ほど必要と言われています。
圧倒的にノロウイルスが引き起こす食中毒事件が多いですが、細菌由来の食中毒では、カンピロバクター、ウエルシュ菌、サルモネラ菌などが多いです。(もちろん毎年原因菌は変化します。)
カンピロバクターやサルモネラは動物の腸管に存在し、菌数はわずかですが、その菌が食品に混入すると増殖して食中毒を引き起こします。
食中毒は基本的に下痢や嘔吐の症状がでますが、中でも特に危険な細菌がボツリヌス菌で、神経の障害により筋肉に麻痺が起こり、呼吸菌が動かなくなれば死に至ります。
1984年、辛子蓮根製造業者の株式会社三香が製造、販売した真空包装の辛子蓮根によるボツリヌス菌の集団食中毒事件が発生し、36名が中毒症状に陥りうち11名が死亡した。
ボツリヌス菌は嫌気性菌(空気がないところで増殖する)である芽胞菌の一種で納豆菌やウエルシュ菌も同じ菌類です。
ボツリヌス菌はボツリヌス症という感染症を引き起こし、1歳以下の赤ちゃんがハチミツを食べてなくなった事件もこのボツリヌス菌が原因です。
参考:【危険】細菌感染を防ぐために赤ちゃんにハチミツは食べさせてはいけない!
芽胞菌は非常に殺菌することが難しくアルコールや次亜塩素酸ナトリウムでも除菌はできません。弱酸性次亜塩素酸水溶液であれば効果があり、適切に使い対策してもらいたいです。
O-157などの腸管出血性大腸菌の食中毒
腸管出血性大腸菌の特徴として少量の菌でも食中毒を引き起こすこと、またその症状が重いことです。ノロと同様に10〜100個でも感染する可能性があると言われています。
基本的には加熱するため菌は死んでしまいますが、菌が増殖すると表面からなかにも広がり中心部まで加熱が行き届かないと感染が起こってしまいます。それらの原因以外には、キムチやキュウリの浅漬けなども食中毒になる場合があります。
また、食中毒以外でも幼稚園や保育園で乳幼児の糞便を介して集団感染が起こることもあるので十分に注意が必要です。
卵を調理して食べる時の注意点
鳥の腸管にいるサルモネラ菌の一種で、この菌は鶏卵の白身にわずかの菌数で存在することがあります。(全ての卵ではありません。)
卵の白身の部分にはリゾチームなどの細菌の増殖を抑制する物質を含み、細菌はそれ以上に増殖しませんので、割って生で食べても問題ありません。
他方、黄身の部分には細菌が好む栄養素が十分にあるため、白身と黄身を混ぜて高温に晒されると菌数が増加します。
従って、調理後早めに食すようにすること、時間が少したった調理物の場合スクランブルエッグよりも目玉焼きを食べるほうがより安全です。
食品の安全を守るHACCP
HACCPは食品工場で導入されており危害分析重要管理点(hazard analysis and critical control point)と訳され、食中毒などの人体に危害を及ぼす可能性がある工程を洗い出し、食品の安全をしっかり管理する制度です。
つまり、菌が繁殖しやすい工程で菌を増やさないようにして加熱殺菌などの時間や温度を管理記録することや食品工場に持ち込ませないために手洗い、除菌剤の活用など徹底的に行います。
薬物耐性菌問題は抗生物質が原因
細菌を退治するために飲むお薬と言えば、抗生物質です。抗生物質は効用が高い反面、使えば使うほどその抗生物質に対して耐性を持つ菌が残ります。
そのため、抗生物質の正しい使い方や抗生物質に頼らない免疫を高める方法について研究が進められています。また、家畜に対しても同様で、家畜に抗生物質を与えることで耐性菌が発生し、副次的に人間にくることもありえます。
そのため、感染してから治すのではなく予防をするために消毒を徹底することにより耐性菌を防ぐ必要があります。
まとめ
効率を求める社会だからこそ食中毒に合うリスクも高まります。もちろん、食品加工工場やレストランなど食品を扱う場所では清掃や除菌を定期的に行うことにより食中毒の発生を抑制しています。
ただ、大量調理マニュアルに従っているだけでは防ぎきれていないのが現状です。
O-157、サルモネラ菌、カンピロバクター、ボツリヌス菌、ウエルシュ菌などノロウイルス以外にも食中毒を引き起こす細菌に注意が必要です。
さらに、スタッフの意識の改革とプラスアルファの対策を講じること(手洗いの徹底、スタッフの体調管理、次亜塩素酸水溶液を使用するなど)が重要です。
以上、ノロ以外の食中毒と病原菌細菌について注意すべきことについてご紹介しました。