日本では、インフルエンザウイルス感染症が良く取り上げられニュースでもよく目にするのではないでしょうか。
他方、ノロウイルスをはじめとする感染症胃腸炎の罹患数は、2017年のデータで約3,000カ所の小児科の病院または診療所からの定点医療機関からの報告件数は870,879件です。(※国立感染症研究所データより)
これはあくまで、定点観測の数字ですので、感染性胃腸炎の数は10倍にも増えると言われています。
そのうち、ノロウイルスが原因による患者は約20〜50%と想定しても約160万人〜400万人が2017年にノロウイルスに感染していると類推することができます。
日本だけでなく世界でも、ノロウイルスに感染することで生産性が下がり社会的損失を被っています。
『ノロウイルス胃腸炎の世界的経済的負担』という論文がPLOSにて掲載され、世界でどのくらい経済的な損失がでているか研究チームにより明らかにされました。
参考http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0151219#abstract
研究チーム:Sarah M. Bartsch, Benjamin A. Lopman, Sachiko Ozawa, Aron J. Hall, Bruce Y. Lee
Contents
ノロウイルスの経済的被害を定量化モデルに
感染症胃腸炎は、5歳未満の小児において死亡率の第4位の原因で、全世界の人口では第2位の原因と言われています。
しかし、世界中でノロウイルスは、インフルエンザなどの他の感染性病原体より注目を受けていませんでした。
その理由として病気の原因がノロウイルスであると断定するのが難しいため比較的軽視されていましたが、世界では、推定7万人の子供たちがノロウイルスにより死亡しています。
現在、ノロウイルスの抗ウイルス剤、消毒剤、ワクチンを開発する中で、ノロウイルスの世界的な経済的負担を知ることは重要です。
ノロウイルスによる疾病の定量的コストのデータは今まで国際的な評価がなされていませんでしたが、この論文データを元に、何にリソースを費やし、効率的に感染症の予防や対策をすべきか把握することができます。
この研究では、病院環境や地域社会の事例におけるいくつかのアウトブレイクの影響を定量化し、WHO地域および世界的に各国、地域におけるノロウイルスの経済的負担を推定することができる計算シミュレーションモデルを開発しました。
ノロウイルス経済損失計算シュミレーションモデルについて
このモデルは、0〜4歳(乳幼児)、5〜14歳(若年層の子ども)、15〜54歳(成人)、および55歳以上(高齢者)の4つの年齢層に分かれています。
これらのモデルに含まれる費用として、外来患者の診察および入院の医療費、社会的費用には、職場や学校の欠勤、欠席における費用や死亡による生産性の損失など多角的に算出されています。
モデルが示したノロウイルスによる経済的損失額
世界的に、ノロウイルスは全年齢で、年間約7億人罹患しており、約22万人の死亡を引き起こすと推定されています。
感染者および感染により死亡した場合、直接的な医療費(入院を含む)は562億ドル(約5兆4000億円)の生産性の損失をもたらしました。
これらが示す結果から、今現在ワクチンがあるロタウイルスよりもノロウイルスのワクチンを開発して接種する方が効果的であることが分かります。
まとめ
世界に、ノロウイルスへの感染が過小評価されていましたが、このモデルが示しているように大きく生産性の低下(経済的損失が大きい)することが分かりました。
世界的な問題としてノロウイルスのワクチンの開発を推進する必要があります。ワクチンだけでなく、正確な知識を得てノロウイルスに感染しない対策・予防をすべきですね。
以上、ノロウイルスに感染することで被る世界の経済損失についてご紹介しました。