人に急性胃腸炎を引き起こすノロウイルスには、36種類以上のタイプの遺伝子型を確認しています。ワンシーズンに2度もノロウイルスにかかったけど免疫がつかないの?と疑問に思うかもしれません。それは、違う遺伝子型のノロウイルスに感染したのかもしれません。
そんなノロウイルスについての研究にて、一部の遺伝子型のノロウイルスでは血液型によって感染率が違うことがいくつか報告されています。
ノロウイルスが体内に侵入し、腸内の細胞にて増殖をします。その腸内の細胞の表面に存在する糖鎖(単体の糖がいくつか長く繋がり鎖のようになった分子のこと)とノロウイルスが吸着することによって結合し、吸着をすることが分かっています。
ウイルスの構造や増殖のプロセスについて記事を書いていますのでそちらを参考にしてください!
それでは、血液型とノロウイルスの関係に関する研究について詳しく見ていきましょう!
Contents
B型はO型に比べてノロウイルスにかかりにくい?
赤血球の表面にある糖鎖が血液型を決めているのですが、十二指腸や小腸や上皮細胞の表面にもあるため、ノロウイルスが「カチッ」と吸着することができます。
もちろん、血液型によって先端の糖鎖の型が異なるためノロウイルスが吸着しづらい型もあります。
研究員のAnne M Hutson氏は、O型はノロウイルスの感染がしやすく、B型やAB型は感染確率が低いと論文で述べています。(ノロウイルス一つの遺伝子型について)
但し、最初にも述べたように、ノロウイルスには36種類以上あるため、遺伝子のタイプが違えばO型では感染が低く、A型、B型では高くなる場合もあるため一概に決まっているわけではありません。
これは試験管での糖鎖との結合力を試す試験の実験結果ということを留意しておいてください。
参考:Norwalk Virus Infection and Disease Is Associated with ABO Histo-Blood Group Type(The Journal of Infectious Diseases, Volume 185, Issue 9, 1 May 2002, Pages 1335–1337)
日本でもノロウイルスによる集団感染から血液型との相関関係を調査
2003年に北海道で、同一遺伝子を持つノロウイルスによる集団感染が学校給食で起きました。そこで、北海道立衛生研究所は、小学校と中学校の児童、生徒661人(小学校2年生から中学校3年生まで)に対してノロウイルスと血液型との相関を調査するため、アンケート調査を行ないました。
この結果、A型が71.1%、B型が65.1%、O型が64.1%、 AB型が55.3%でした。A 型は、AB 型に比べて有意に高い発症率を示しましたが、他の血液型の間では有意差は認められませんでした。
また、児童・生徒の家庭における2次感染発生率は、A型が41.4% 、O型の39.5% B型が33.3%、AB型が19.2%で、AB 型はA型およびO型より有意に低いことが認められました。
この事例において、AB型は検出されたノロウイルスに対して感受性が低かったものと推察されました。そのため、血液型はノロウイルスに対して何らかの関係性がある可能性が示唆されました。
参考:小中学校で発生した集団食中毒におけるノロウイルスとABO 式血液型の関係 ―アンケートに基づく実態調査―
ノロウイルスは培養技術がまだ確立していないため多くのことが判明していません。
将来には血液型とノロウイルスの関係が解明されていくことでより細かい対応ができるようになるかもしれません。これからも、研究の進展がされることを期待します。以上、ノロウイルスと感染率と血液型には関係性がある?
についてご紹介しました。