【追記2019年3月14日】
昨今ノロウイルスが取り上げられるようになりましたが、昔にもノロはあったのでしょうか?
ワクチンの開発や日本が経済成長し、細菌やウイルスについて認識し始めた後多くの危険な感染症への対策や予防をできるようになってきました。
もちろん、全てを防ぐことはできませんし、私たち人間が環境に適応したように微生物も環境順応していきます。
実は、ノロウイルスは小型球形ウイルス(ノーウォーク様ウイルス)と呼ばれており新しいウイルスではなく新型のウイルスだ!と思われる方もいるかもしれませんが、昔から認識されているウイルスです。
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ノロウイルスの感染能力の高さ
ノロウイルスの特徴として下記のことが挙げられます。
●水中で安定であること
●乾燥にも強いこと
●胃酸にも耐える構造(強酸性でも殺せない)
ノロウイルスはインフルエンザウイルスとは異なり、口や鼻の咽頭部では増殖しません。胃を通り越して、小腸粘膜の細胞にてウイルスを増殖させます。
胃内では、胃酸(塩酸)が分泌されており、少量の病原細菌やウイルスがきても殺してしまいますが、ノロウイルスは生き残ってしまいます。
ノロだけでなく、食中毒を引き起こす大腸菌や黄色ブドウ球菌など大量に食品に含まれていると胃酸(塩酸)をかいくぐって腸に到達し、腸炎や下痢を引き起こしてしまいます。
ノロは下痢中糞便に大量に含まれているため現代の水洗トイレで今の時代感染させることが難しいので、嘔吐もさせるようなウイルスが進化の過程で起きたのかもしれません。
また、ノロウイルスは免疫の持続期間が短く、ウイルスの型が多いため何度もノロウイルスに感染してしまいます。
ノロウイルスは人口培養技術もまだなく、効果的なワクチンの開発にまで至っていません。
つまり、ノロウイルスのワクチンは現在ありません。
下記に詳しく示していますが、日本だけでなく世界中で感染しているノロウイルスで、経済損失を表した一つのモデルによると医療費(入院を含む)は562億ドル(約5兆4000億円)の生産性の損失があると言われています。
参考:ノロウイルスに感染することで被る世界の経済損失について
ワクチン接種の重要性
ワクチンは非常に優秀で予防効果が高いので積極的に受ける必要があります。どのような感染症の予防に有効か知っておくことが大切です。
参考:【まとめ】主な定期予防接種と任意ワクチン接種でどんな病気を予防できるか
実は、ワクチンを受けた人も時間が経過して免疫が低下するとまだ社会に残っているウイルスに自然感染して症状はでないけど免疫が強める効果がありました。
一方で、全ての人がワクチンを接種することで自然感染する機会がなくなり触れなくなるために免疫が下がっていくのです。
この状態で海外に行ったり、海外の人が持ち込むと風疹や麻疹(はしか)など感染症になってしまうケースがあります。
参考:なぜ麻しん(はしか)が日本で流行るのか?予防するためにはワクチン接種を
余談ですが、旅行者下痢症状で比較的多くかつ重症になるのは海鮮食品を食べて感染する腸炎ビブリオ菌です。
腸炎ビブリオは酸性に弱い性質なので、通常通り、胃酸が分泌されていれば感染は起こりません。
しかし、熱帯の国で水分をたくさんとることで胃酸が薄まったり、もともと胃が悪い人は胃薬を飲むことで酸を中和する物質が入っており、感染するリスクが高まります。
なお、果物のなかは無菌なのできれいなナイフで皮を向けば安心して食すことができます。
大人も複数回ワクチンをすることで赤ちゃんを守る
また、大人でワクチンによる免疫が低下してくると赤ちゃんに危険がおよびます。
母親は母乳を通して赤ちゃんに免疫をあげます。その免疫は数ヶ月〜半年程度感染症から守ってくれます。しかし、母親の免疫が低くなれば赤ちゃんにあげる免疫も短くなってしまいます。
参考:キエルキンと赤ちゃんの関係「新生児の免疫力と母乳そして感染症について」
赤ちゃんにはすぐにワクチンを接種することができないので、母親になる前に追加ワクチンを接種することをオススメします。
ノロウイルスの感染経路はどこから?
ノロウイルスに感染した人の下痢をした糞便はトイレによって下水に流してしまうため問題ないようにみえますが、掃除をしていない便器が乾燥して埃と一緒に飛散してしまいます。
基本的には嘔吐→埃→口の感染経路だけでなく、嘔吐、糞便→手→口の経路でもウイルスが広がってしまいます。
乾燥にも、水中にも強いノロウイルスですので、食品工場や食堂などの手に付着して食品に混入すると多数の集団感染を引き起こします。ウイルスは細菌とは異なり生きた細胞内でしか増殖できません。
このような食品工場で加熱した後にできる食品や加熱なしの食品には一般細菌数の基準値があります。保健所などで行われる一般生菌試験では、1gあたり10万の菌、加熱なしの食品なら1gあたり100万の菌であれば提供しても良いことになっています。
一般細菌は病原細菌とは異なり病気を引き起こさない菌のことを指します。従ってそこまで菌を取り入れたとしても全く問題ないですし、私たちと菌は共生しているのです。
しかし、ノロウイルスは食品中で増殖していなくても、たった10〜100個ほど侵入しただけで感染してしまうという報告がされています。
一般細菌と比較してもごくごくわずかでも感染してしまうことを防ぐことは実際の現場では難しいです。
厚生労働省が食品を扱う施設のガイドラインである『大量調理施設衛生管理マニュアル』でもノロウイルスは危険視されており、努力義務ではありますが、調理従事者に月一回以上検査を受けさせるようにするように決まりました。
しかし、これが適用される施設は大きい施設のみなのでまだまだ防ぐことは難しいと思います。
さらに、いくつかの細菌を特定するための検査は安価(1000円〜2000円程度)できるのに対し、ノロウイルスは1種類だけでも4~10倍ほどの費用がかかります。
実は、これがウイルスと細菌の違いなのですが、細菌を培養して特定することはあまり難しくありませんが、ウイルスの遺伝子を人為的に増殖させる必要があります。細菌は、体内だけでなく体外で栄養分があるところで増殖することができます。特に食べ物は細菌にとっては格好の餌場です。
しかし、今ノロウイルスを培養する技術は世界的にありませんし、少ない数でも感染させることが可能なため発見も難しいのです。
冬場にやる餅つきで治りかけの人が手伝うこと、給食当番の子どもが感染していた、パンの製造会社で職員が感染していたことなど1人の油断や知らず知らずのうちに大規模な集団感染を引き起こしてしまいます。
ノロウイルスは不活化することが難しいウイルスで、アルコール除菌には効果がなく不活化できないし、石鹸で手を洗っても殺菌効果はなく、洗い流すことはできますが、分解はできません。
参考:ノロウイルス対策に効果がある除菌剤について比較しました!
ノロウイルスは循環してまた帰ってくる
ノロウイルスは牡蠣などの二枚貝が持っていると言われますが、実は貝の中では増殖はしません。
実は、ノロウイルス感染者の糞便が下水処理場を通り海に流され牡蠣の所に行くのです。(下水処理では、微生物が糞便中の有機物を食べて無機物に分解しますが、ノロウイルスは強いため殺されずに海に流れてしまいます。)
牡蠣は1時間あたり20ℓの海水を取り込みウイルスは中腸腺に濃縮されます。ノロをもった牡蠣を生で食べることでまた感染者を引き起こします。
特に、都市の人口が多ければ下水処理から流れる排水も多くなり近海の養分は増えて植物プランクトンが増えます。そのような牡蠣が育ちやすい環境で養殖しているため必然的にノロウイルスを含む可能性も高いのです。
一方、海をきれいにしているとも言えます。生と加熱用の牡蠣を間違えないようにしてほどほどに食べるのがよいかもしれません。
以上、ノロウイルスのワクチンはない!ノロの感染経路とその特徴についてご紹介しました。